平成24年に文部科学省が「中学校学習指導要領」を改訂し、ダンスと武道が必修化となりました。
創作ダンス、フォークダンス、現代的なリズムのダンスの3種類の中から選択することができますが、約6割の学校が現代的なリズムダンスを選んでいるそうです。
現代的なリズムのダンスとは、主にヒップホップダンスを差しますが、ここで問題になるのが学校側で現代的なリズムダンスを指導できる教師がいないことです。
わたしたち日本人にとってはそれほどダンスは馴染みのあるものではなく、ダンスの知識も技術もない層が教師として生徒に指導するのはいかがなものかという意見も実際に見かけます。
このように多くの問題を抱える中、実はダンス必修化が開始した同年(2012年)に「ワールドリズムダンス技能指導士」という検定・研修制度を、一般社団法人ワールドリズムダンス技能協会が厚生労働省と協議して発足しています。
その中にある「FUNK編ヒップホップダンス基本技能指導士」は、まさに現代的なリズムダンスを指導するのにはぴったりの検定と言えます。
ここでは、そんなヒップホップダンス基本技能指導士について、内容や費用、取得方法、資格は必須なのか、などをお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてくださいね。
ヒップホップダンス基本技能指導士とは?
冒頭で軽く触れましたが、そもそも「ヒップホップダンス基本技能指導士」とはどのような資格なのでしょうか。
「ワールドリズムダンス技能指導士」という資格の中に、FUNK編、JAZZ編、ラテン編、リクリエーションダンス編といくつか種類があり、FUNK編に属する資格がヒップホップダンス基本技能指導士です。
平成24年に、ワールドリズムダンス技能協会が厚生労働省とタッグを組んで発足しました。
ワールドリズムダンス技能指導士は初のダンスの資格
ダンスという表現の世界においては、何が正解で何が不正解なのかが不透明な部分です。
それ故に、なかなか正当な評価にあたる基準となるものがないように思えます。
そのせいもあってか、ワールドリズムダンス技能指導士が発足されるまでダンスの資格というものはありませんでした。
つまり、ワールドリズムダンス技能指導士は、ダンス業界において初の資格ということになります。
ヒップホップダンス基本技能指導士の取得目的と難易度
ヒップホップダンス基本技能指導士とは、生徒に指導する上で明確な指針となる技術や知識を身に着けることを基本的な目的としています。
発足したワールドリズムダンス技能協会では下記のように発言しています。
「技術だけではなく、ダンスをもっと人の心の近くへ位置づけしてもらえるように、ヒップホップダンスの魅力を伝えられる指導者を育成します」
上記のことから、ただ学ぶだけでなく、ヒップホップダンスをより楽しく、より身近なものに感じてもらえるようにする目的があることがわかります。
ヒップホップダンスの資格はほかにもあるので下記を参考にしてください。
ヒップホップダンス基本技能指導士の講習内容
ヒップホップダンス技能指導士の主な講習内容は以下の通りです。
- 実技講習
- 音楽の聴き方
- リズムの取り方
- 心理学講習
- 理論講習
ただヒップホップダンスの指導方法や技術を身に着けるだけではなく、心理学やビジネスマナーなども取り入れることで、心身ともにさまざまな面での向上を目指しているそうです。
教員コースと一般コースがあり、教員コースは講習が必須です。
教員向けコースは、学校の授業にすぐに役立てるような講習を実施しており、一般コースとは審査基準が異なります。
難易度
ヒップホップダンス基本技能指導士検定は、筆記試験と実技があります。
- 筆記試験は50点中35点以上
- 実技はSABSDの5段階中B以上
これが合格ラインです。
筆記試験はテキストがあり、その範囲から出題します。
実技もテキストの内容を見る限り、そこまで難易度が高い内容ではありません。
資格取得の難易度はちゃんと講習を受けて練習すればそこまで厳しいということではさなそうです。
ヒップホップダンス基本技能指導士にかかる費用
ヒップホップダンス基本技能指導士を取得するにあたり、当然費用が発生します。
まずは受験料ですが、受ける内容によって金額が異なります。
- 試験のみ受験・・・25,000円
- 試験+ワールドリズムダンス技能協会の研修受講・・・20,000円
②の研修を受講した場合、別途下記の費用が発生します。
- 研修費用24,000円
- テキスト代6,000円
つまり、②のルートでいくとトータルで50,000円ほどかかることになります。
そして、検定に合格した場合は認定登録料としてさらに5,000円、年会費として12,000円の費用が発生します。
前述の50,000円に登録料5,000円と年会費12,000円がプラスされるため、結局初期投資で67,000円、研修なしでも42,000円ものお金がかかることになりますよね。
これはどう考えても高すぎる気が・・(;^^)
さらに、これはあくまでも基本技能指導士の内容です。
さらに、ヒップホップダンス応用技能指導士もあり、通常の受講・受験料に50,000円かかり、3年で資格が更新となるので費用は増す一方です。
>>FUNK編 ヒップホップダンス 応用技能指導士|一般財団法人職業技能振興会
ヒップホップダンス基本技能指導士を取得した方が受けられる上位資格です。
どちらにしろ、莫大な費用がかかることは間違いありません。
ヒップホップダンス基本技能指導士は、一般向けと教員向けのコースがあります。
教員向けのコースは研修の受講が必須です。
「現代的リズムのダンス」の授業で指導を行い、学校の授業と限定したものです。
ヒップホップダンス基本技能指導士の取得方法
ヒップホップダンス基本技能指導士を取得するには、前述の一般社団法人ワールドリズムダンス技能協会に申し込む必要があります。
検定は年に数回(2~3回程度)行われており、事前に申し込むことで試験を受けることができます。
受験資格は年齢が18歳以上のみであればだれでも受けることができますが、定員が15名と決まっています。
そして、東京を中心に行っているので、早めに予定を立てて申し込みした方が良さそうです。
詳しい日程や、今後の開催予定などは下記のワールドリズムダンス技能協会のホームページで確認することができます。
>>FUNK編ヒップホップダンス基本技能指導士|一般財団法人職業技能振興会
ヒップホップダンス基本技能指導士は必要?
ここまであらゆる角度からヒップホップダンス基本技能指導士についてお伝えしてきましたが、あなたが気になるのは「結局のところ、取得しないとダメなの?」だと思います。
正直それぞれが置かれた環境と考え方によります。
持っていて損はしないが必須でもない
ヒップホップダンス基本技能指導士の資格は、持っていても損はしません。
ただ、資格取得が必須ではないため、持っていなくても困ることもないはずです。
それぞれにメリット・デメリットがあります。
たとえば、資格を持っていれば単純に自分自身がヒップホップダンスを指導できるだけの技術と知識を得た証明にもなりますが、そのための莫大な費用や維持費が足かせとなります。
自分が必要かどうかを見極めなければならず、あったらあったで良い、なくても困らない資格なので断言はできません。
指導者としてプラスになる
ヒップホップダンス基本技能指導士は、教育者向けの資格です。
「指導者育成」という観点での検定なので、指導者として向上心があるなら取得するメリットがあると思います。
資格取得は、やる気があったり、意識が高いことの表れなので、評価されることもあるでしょう。
ヒップホップダンスの技術だけでなく、教養も身に付くので指導者としてプラスになります。
とはいえ、現時点では資格取得が必須ではないので、社会的に大きな恩恵を受けることは少なく、費用や手間を考えると微妙ですね。
もし、あなたがヒップホップダンスの授業(現代的リズムダンス)でお悩みなら、時間もお金もかかる資格取得よりもDVDを活用するほうが便利です。
踊れなくても楽に指導できる方法もあるので、「ヒップホップダンス指導革命【ダンス必修化で、お困りの中学校の先生へ。明日から授業で使える指導法】」を参考にしてください。
ヒップホップダンス基本技能指導士とは?のまとめ
ヒップホップダンス基本技能指導士についてお伝えしてきましたが、何とも言えない微妙な資格という印象が強い反面、環境次第では持っていた方が良いでしょう。
ただ、個人的にはやはり費用面が大きな負担になりすぎていると感じており、それが障壁となってなかなか取得に踏み込めないという指導者も中にはいるはずです。
絶対に必要、というわけでもないのがまた踏みとどまらせる理由になってしまうのかもしれませんね。
一度客観的に自分自身を見つめなおし、必要か不要かを判断するのが良いでしょう。